恋の罪
『恋の罪 マルキ・ド・サド選集』 マルキ・ド・サド 澁澤龍彦 訳
“どうか君、お願いだから、幸福の絶頂にいながらも、あんなに楽しかったぼくたちの幼ない日のことを想い出してはくれないか……君が永久にぼくのものだと誓ってくれた、あの懐しい時代を……ああ、楽しかった時は過ぎてしまった、そして苦しみの時がこれからずっと続こうというのだ!”
“悪人の魂のうちにも、誠実の跡はあるものであり、また美徳というものは、もっとも堕落した人々でさえ多くの場合敬意を払わないではいられないほどの、ある種の価値を人間の眼にあらわすものなのである。”
サド、と聞くと不道徳なイメージをもつ人は、まずこの作品を読んでほしい。SMというとムチとかろうそくとかボンデージが思い浮かぶけれど、元祖サディズム小説はもっと人間の内奥にある残虐性、どちらかと言えばホロコーストやスタンフォード監獄実験の心理を暴いているから。
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